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 武志はリビングに入ってすぐに、たったいま由香が携帯を戻した、自分のジーンズに手をかけた。 由香の心臓がバクンと跳ねる。  武志の携帯を見てしまったのは、衝動的なことだった。 どっち向きに携帯が差し込まれていたなんて、覚えちゃいない。 ジーンズの皺の寄り方なんかは、もってのほかだ。 武志がシャワーを浴びる前と後で、変化はいくらでもある。  気付かれないだろうか、と由香は不安になった。 しかし別に、気付かれてもいいような気もした。  武志は携帯を開き、そしてすぐに閉じた。 着信やメールの有無をチェックしたのだろう。 どちらもなかったことは、知っている。  
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