404人が本棚に入れています
本棚に追加
―― 一人だと、思いたくなかった。
見知らぬ地に、ぽつんと放り出されたという事実。突き立てられた孤独という現実。
不安で不安で、悲鳴を上げそうになったときに出会えた『梓兄ぃ』に心が緩まったというのに、見知らぬ人だということを受け入れたくなかった。
――気がついてしまっていた時点で、認めてしまったも同然だったのだが。
虚勢を張って、梓兄ぃと呼ぶ愚かさ。
彼が迷惑しているのもお構いなしに、自分のためについて歩く傲慢さ。
だけどそうしないと、今にも崩れ落ちそうだったのだ。
――“私”という存在は確かにあるのか、わからなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!