百絡の来訪者

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   だからこそゆうが中学へと上がる春に、彼が行方不明になったことは彼女の心を深く傷つけた。  ――中学に入ったら、告白しようと思っていたのだ。  小学生だと当時、高校生である梓に迷惑をかけるのではと考えていたのだ。  だけど、そんなことを考えなければよかった、と後悔しても梓の行方は知れないまま――。  結局は失踪として処理されてしまったのである。  だから、ゆうは梓との最大の接点だった剣道を忌避し始めた。  道場に足を踏み入れて、あのピンッと伸びた背中が見れないのが悲しい。  張りのある掛け声が響かないのが悲しかった。  
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