百絡の来訪者

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   上手く試合運びをしたとき、よくやった、と褒めてくれる大きな手が頭も撫でることも、大好きな笑顔が見れなくなったことも、ゆうには胸を切り裂かれるかのような痛みに苛んで、故に彼女は剣道を捨てることで――彼がいなくなったという現実から逃げたのだった。  「梓兄ぃ……私のこと、わからないの?」  あれから三年だ。  失踪当時、17歳であった梓は20歳になっているだろう。そしてゆうは、中学を卒業して高校生となった。  だから、わからないのかもしれない。  
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