ゆくりかなる東風

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   気が狂いそうだった。  今まで築き上げてきた“自分”という価値観がおかしいのだというように世界を。自分という存在を否定された。  けれどそんな中、ただ一人見知った『梓兄ぃ』だけが私という存在を繋ぎとめてくれた。……くれると思った。  だけどそれさえも所詮、まやかしにすぎなかった。  ――ズンッと胸を強打される。  ……苦しい。苦しい苦しい、苦しいっ!  急に、呼吸の仕方がわからなくなった。  ぱくぱく、と口を開けるけれど空気を吸い込むことは叶わず、ゆうは焦る。  
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