ゆくりかなる東風

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   ――……梓兄ぃ? ううん、違う。  この人は梓兄ぃではない。だけど声音も表情も記憶のままで――だから、甘えたくなる。 「……す、みません」  彼に促されて、ようやく落ち着いたゆうがしゅん、と目線を下げた。  また迷惑をかけてしまった。そう、ゆうが俯き、彼から離れようとしたのだが、当の彼に制された。  え、と驚き、顔を上げるゆう。それを待ってましたとばかり、彼が笑みを浮かべた。  
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