ゆくりかなる東風

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  「事情は察せませんが、行く宛がないのでしょう? もしよかったら、私の宿所で働きませんか?」 「え!?」 「もちろん、住み込みで」  急展開に、二の句が告げられない。  ゆうは彼の穏やかな笑顔を見上げたまま、固まった。  ……えっと、幻聴なんじゃないだろうか。  人違いといえど、梓兄ぃとそっくりな人。  そして現在、一人だと思い知ったゆうにとって、彼だけが現在、ゆうと接してくれる唯一の存在だ。  だから、離れがたかった。  
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