希代縁の結び目

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  「はい、壬生浪士組の局長を勤めていて私の――」 「おい、総司! おまえ、稽古にも出ずにどこ放っつき歩いてやがんだ!」  局長? 局長とはどんな役職のことだっけ?  ううん? と眉を寄せたゆうだったが響いた声に「ひぃあ!」と飛び上がる。  自分に呼ばれたわけでもないのに、その声の迫力に飲まれてしまったのだ。  目を大きく開き、声の発生源を見やると眉間に深い皺を寄せた男がこちらを睨んでいた。  着崩された着物。袖の通していない腕は衿幅へかけられ、見るからに尊大な態度を見て、自然と背筋を伸びた。というのに矛先である沖田といえば、ゆるりと笑みを浮かべて暢気な声を出した。  
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