Ⅰ 『穴』

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森に落ちようとした瞬間、森全体から白いバリアのようなものが現れた。  それまで隕石のごとくストレートに落ちていた私の体は、バリアに触れた瞬間フワリと浮いた。  まるで水の中にいるかのような無重力空間に慣れないながらも楽しくなって、空中でくるくる回り足を下に向けるとゆっくり地面に着陸した。  私の足が土を踏んだのを確認したのか、すぐにバリアは消え去り元に戻った。 あたりを見回す。どうみても知らない場所。見たことのない植物や、動物がうろついている。 私はもちゃもちゃになった髪を手櫛で整え、意図的に作られたであろう森の道を歩き始めた。 『・・・・・・。』 穴に落ちた瞬間から決定的におかしいのだが、夢を見ている割に感覚がリアルだ。  そして、自分を呼んだあの声。何故名前がわかったのだろう?この名前は公表してないのに。 『アリス!』 声のした方・・・自分の進行方向の遙か先を見ると、白い塊がピョンピョンしながらこちらへやってくる。 段々近づいてくるにつれ、それが小さな男の子だと分かった。 転がりそうな勢いで息を切らしながら、キラキラした瞳を揺らして走ってくる白い男の子。 ・・・の、頭には耳と思われる物が揺れている。 _
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