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「そして世界は平和になりましたらとさ………めでたしめでたし…………か…」
手に持つ一冊の本を閉じ窓の外を見上げる。
今日は雪が降っている。降り注ぐ白が地面を、木々を純白に染め上げる。
「白い世界………なら黒は?赤は?他の色は何処にある?心の中?記憶?」
立ち上がると窓を開ける。冷たい風が背中の中程まである白銀の髪を撫でる。
いつの間に手にしたのか小さな小刀を右手に持ち、左の親指を浅く切る少女。
滴る赤い血が白い絨毯の上に紅い染みを作っていく。
「何処にも無い色。私の色、何処にでもある色………それは世界」
流れる血を止めもせずに心ここにあらずと言った素振りで呟き続ける。
「緋……血の色。闘争の朱、激情の赤……でもそれは元から在ったもの。既に染まっていたもの。変えようがない理…」
なおも静かに佇む。
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