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「何にも染まれない私は何処に行く……世界は、誰が為にあるの?」
開け放った窓をそのままに少女が机に向かう。床に点々と血の跡がついてゆく。
「私は無色……染まらない、染まれない。だから後は…」
絹の布にくるまれた細長い棒の形をした何かを取り上げる。
「この音で染め上げるだけ」
布を取ると左手の血をそれで拭く。中から出てきたのは神秘的な装飾の施された一本の笛。
それを手に扉を開け、雪の降りしきる外に出ていく。
小さな足跡はすぐに雪に埋もれてゆく。姿が林の中に消えると、彼女がいた家も跡形も無くなっていた。
白い雪は降る
全てを包み込み、白雪は降り続ける…
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