屋上と談話室

3/8
前へ
/22ページ
次へ
わずかに香る甘い匂い。これは………多分、タバコだ。 懐かしい………。そのタバコ独特の甘い匂いが懐かしい。 すると、目尻から暖かいものが流れた。夢で泣いてるのかな? でも、涙は確かに本物で閉じている目蓋からボロボロと溢れ出る。 ―――タバコのせいだ。甘い匂いが俺を辛くさせる。 早く……早く、喜色の笑顔が見たい。匂いを嗅ぎたい。安心したい。 ボロボロと溢れ出る涙が、ふいに拭い取られる。それは、とても冷たい手で少しだけびっくりした。 でも、昔、だれかが¨冷たい手の人は心が暖かい¨なんて言ってたな……。 じゃあ、手が暖かい人はどうなんだよ、ってな…。ははは。 「―――手が暖かい人は、皆を暖かくしてくれる」 誰だ? 俺の夢ん中で誰かがそう言った。 でも、手の暖かい人は皆を暖かくしてくれる、か…。 結構、いいこと言ってんじゃん。 俺は少しだけ微笑んで、甘い匂いに浸った。 そういえば、あの人も手ぇ暖かかったな…。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

294人が本棚に入れています
本棚に追加