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わずかに香る甘い匂い。これは………多分、タバコだ。
懐かしい………。そのタバコ独特の甘い匂いが懐かしい。
すると、目尻から暖かいものが流れた。夢で泣いてるのかな?
でも、涙は確かに本物で閉じている目蓋からボロボロと溢れ出る。
―――タバコのせいだ。甘い匂いが俺を辛くさせる。
早く……早く、喜色の笑顔が見たい。匂いを嗅ぎたい。安心したい。
ボロボロと溢れ出る涙が、ふいに拭い取られる。それは、とても冷たい手で少しだけびっくりした。
でも、昔、だれかが¨冷たい手の人は心が暖かい¨なんて言ってたな……。
じゃあ、手が暖かい人はどうなんだよ、ってな…。ははは。
「―――手が暖かい人は、皆を暖かくしてくれる」
誰だ?
俺の夢ん中で誰かがそう言った。
でも、手の暖かい人は皆を暖かくしてくれる、か…。
結構、いいこと言ってんじゃん。
俺は少しだけ微笑んで、甘い匂いに浸った。
そういえば、あの人も手ぇ暖かかったな…。
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