0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとうございました~!」
店員の声に送られてコンビニを後にする。
時刻はそろそろ夜中の1時を過ぎようとしていた。
その時
「和樹、あれを!」
急に華蓮が声を上げた。
「ん?…あれは…」
華蓮の視線を辿ると、そこには一人の青年がいた。
その格好はまるでマンガに出てくる典型的な勇者の物のようで、肩越しに剣を担いでいる。
「獲物か…華蓮、いつも通り頼むな」
「はい」
華蓮は頷くと胸の前で手を合わせて目を閉じ、妖力を練り始める。
「包囲結界…遮外の型!」
華蓮の目が開かれると同時に妖力が弾け、辺りにドーム状の光の膜が現れる。
膜は一気に広がり、周囲200m程を包み込んだ。
「結界、張りました」
「さて…さっさと終わらせるか」
そう言うと俺は青年の元へ歩み寄る。
青年はこちらに気付き、警戒した様子で声をかけてきた。
「この結界はお前の仕業か?俺に何の用だ?」
だがその問いに答える気はない。
代わりに俺はポケットから一枚のメモを取り出して、『ソレ』の名を呼ぶ…
「紙現の短刀!」
するとメモは一瞬にして黒い短刀へと変化した。
突然の出来事に青年は驚き、背後の剣に手を伸ばすがもう遅い。
俺は短刀を大きく振り抜き、青年を切り裂いた。
脇腹から肩へと斜めに切られた青年は、声を上げる事もなく地面に倒れた。
「よし、仕事終わり!」
直後、青年は「ポンッ!」という小さな爆発音と共に煙となり、中から一枚の紙が現れた。
それには青年そっくりのイラストが描かれている。
やがて紙は何かに吸い寄せられるかのように空へと舞い上がり、夜の闇へと消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!