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階段を一段、また一段、転ばないように、でも、足を止めないように、もどかしい思いで足を動かしていた。
けれど、階段の踊り場まで残り3段になった所で、私は足を踏み外した。
短い悲鳴を上げて私は踊場に顔面から突っ込みそうになった。
倒れそうになった瞬間、私はこれから来る痛みに備えてギュッと目をつぶった。
気が付くと、私は彼の上に倒れていた。
彼は苦しそうに顔を歪めている。
どうやら彼が私の下敷きになって助けてくれたらしい。
警報音は、もう鳴っていない。
階段の上を見たが、白い手はもう無かった。
ホッとして息を吐く。
「そろそろ退いてくれないかな?」
私の下敷きになっている彼が苦しそうにそう言った。
「ごめんなさい!」
私は慌てて彼の上から退く。
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