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窓の外の世界、地球という星の日本という国は、いつの間にか桜舞う春になったようだった。
今日は四月一日。
何を隠そう、といっても元々隠すつもりなんて皆無なのだが、実を言うと、これから通うことになる高校の入学式だった。
あと三十分程で集合時間となる。
下の階からは時間に厳しい母が私を急かす声が聞こえてくる。
行きたくない。
それが今の正直な気持ちだった。
中学二年だ。
あの時から私は可笑しくなってしまった。
何が、と問われると上手く答えることができないのだが、確実に可笑しい。
ネジか何かが、足りないのだと思う。
心にぽっかりと穴が開いたようで、多分その部分を失ったことを嘆いている。
何が足りないのかなんて本当は分かっている。
ただそれを思い出すことを頭が拒否している。
だからそうなってしまう可能性のある場所には、出来ることなら行きたくなかった。
「美鶴、早くしなさい!」
そうこう考えている内に時間は十分経っていた。残り二十分。
家から高校まではそう遠くない。
今なら急げばまだ間に合う。
間にあってしまう。
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