始まりの日

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どうしようかと迷った末に、鍵のかかったドアを激しく叩き始めた母に降参して、真新しい制服に腕を通した。 胸についた何かの花の紋章を意味なく見つめ、気だるげに髪をとかし、薬を飲む。 そうしてやっとドアを開けると腰に手を当てて仁王立ちしている母が居た。 かなり御立腹のようだ。 「急ぐわよ」 彼女は苛立っているのか、ただ急いでいるだけなのか、それだけ言うと私の手を引いて階段を駆け下りた。 前のめりになって危険な体制だったのに、ちゃんと階段を下りきった私を誰か褒めてほしい。 母に連れられて玄関に向かう間にチラリとリビングを見ると、兄の豊(のぼる)がゲームをしていた。 彼はまだ春休みのようだ。 「行ってきます!」 靴を履いて、ドアを開けてそう言うと、先程覗いたリビングの方から悲しそうな悲鳴が聞こえた。 どうやら赤い配管工に何かあったようだ。
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