始まりの日

6/10
前へ
/12ページ
次へ
「俺さ、友達つくるのが下手なんだ」 「そうは見えないけど」 突然話しかけてきたのにか、と思う。 「本当だって!君が此処での友達第一号になる予定なんだけど、よかったら名前教えてくれない?」 「木下美鶴(きのした みつる)、です。そっちは?」 「美鶴ちゃんか。可愛い名前だね。俺は加納祐太(かのう ゆうた)。呼び捨てでいいよ」 可愛い名前、なんて生まれて初めて言われた。 容姿を褒められたわけではないのに顔が熱くなるのが分かる。 恥ずかしがっていることを相手に気付かれないことを祈る。 それにしても、加納祐太か。 呼び捨てでいいと言われると、何か別の呼び名を考えてしまう。 私は少し考えた後に、彼を呼ぶ。 「じゃあ祐ちゃんで」 「俺、女じゃないんだけど」 祐太改め祐ちゃんはそう言って苦笑する。 でも本気で嫌なわけではなさそうだからこのまま祐ちゃんと呼び続ける事にしよう。 だってそれこそ可愛いじゃないか。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加