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種をまき終えたときに、美化委員長が両手でジョウロを持ってやってきた。
「終わった?じゃあ水をたっぷりやっておいてね。水まき当番は後でプリント配るから、当番の日の朝と放課後に頼むね」
私にジョウロを渡し、また小走りで去っていく。
たっぷりと水の入ったジョウロを両手に持って、たぷんたぷんさせながら私が花壇に向かおうとすると、
「貸して」
と、神谷くんの手が私の手からジョウロを奪った。
神谷くんが花壇に水をまく。
片手で、花壇の端から端まで届くようにジョウロを揺らしながら水をまいていく。
あんな重い物、片手で持っちゃうんだ……。
春の光がジョウロから流れるシャワーの水を照らし、小さな虹を作った。
初めて神谷くんと話したな……。
胸の奥に、こそばゆいような、あったかいような、不思議な感覚が生まれた。
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