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エナメルバックを肩にかけ、そのバックに制服の上着を引っ掛けている。 真っ白のシャツがまぶしい。 「神谷くん」 神谷くんは、私の横に屈みこみ、じっと芽を見つめた。 「昨日はまだ出てなかった」 神谷くんが呟いた。 「うん。今朝、見に来たら、ちょこっと芽が出てて。今、見に来たら、朝より伸びてて、びっくりした」 私が答えると、 「……今朝も見にきたの?」 神谷くんが私を見て、聞いた。 「うん。……芽が出たこと、話そうと思ってたんだけど。言いそびれた」 私は、神谷くんにそう言った。 神谷くんは再び目をそらし、花壇を眺めた。
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