11/16
前へ
/110ページ
次へ
少し後ろにずれて、神谷くんを盗み見る。 斜め後ろから見る背中。 広くて、大きくて、硬そう。 白いシャツの向こうに綺麗な筋肉と肩甲骨を思い浮かべる。 そのとき、神谷くんの背中に小さな赤いものがひっついているのに気付いた。 「あ」 「なに?」 「……てんとう虫」 神谷くんの背中に、てんとう虫が一匹、とまっていた。 白いシャツの上に、ぽつんとしがみついている。 私はそっと手を伸ばした。 てんとう虫を捕まえようと人差し指を伸ばす。 すると、気配に気付いたのか、てんとう虫は白いシャツの背中を動き回る。 指はてんとう虫を掠めて、シャツに触れる。 思ったように硬い、あたたかい感触が指先に触れた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1517人が本棚に入れています
本棚に追加