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トキはそこで話をとぎらせた。
一つだけ引っ掛かり、又七はトキに質問した。
「…その夫婦に、子供はいましたか?」
その問いに、トキは不気味な笑みを浮かべて言った。「いたさ。子供が二人、ね。だが妹は病を患って死んだらしいよ。薬屋が薬を売ってくれなかったと…兄の方はまだ生きてるがね」
又七は考えた。
……60年前に夫婦が死んだ…それなら、その子供はすでに60年以上生きていることになるはず。
───それなのに、あの容姿はおかしい。
又七のその考えを読み取ったかのように、トキは呟いた。
「兄の方は可哀想だよ……16の頃親に不老不死の薬を飲まされたんだからね…だから容姿は60年前と全く一緒だ」
信じられない話ばかりだったが、何故か又七には納得出来た。
────何故だろう。
薊と会ったからだろうか。
「あの家族は、あの桜木が大好きだったからねぇ…」トキは思い出すように遠くを見つめながらそう言うと、ゆっくりと立ち上がり又七の隣から去った。
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