眼を覚ましたら、知らない場所だったってのはよくあることだ

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背後から何とも分かりやすい敵意が感じられた。 集中し、感覚を研ぎ澄ませる。恐らく敵方に二、三歩進めば接触するくらいの距離だろう。数は一、さっさと攻撃しないところを見るにまだこちらが気付いていないと思っているのだろう。 最近の天国の使者は天に召された者を攻撃するようになっているのか? 物騒なことこの上ないな。 金属が擦れあう音が聞こえた。音から察するに鞘から抜刀したか……ということは武器は剣か刀、それも音の長さからかなりの大きさとみた。……というかまだ抜刀してなかったとは、能天気な使者だ。 さて、どうやら向こうさんの準備は済んだようだが、こちらはどうするか。このままむざむざ斬られるわけにもいかんしな、なにか対策を練らなければ……。 と、こちらが思考を回している間に風を切る音が耳に入った。考える時間も無しか、しょうがない……。 瞬時に振り返り、使者の手がどこにあるかを確認する。頭頂部、今まさに刀を振り下ろそうとしている最中。それなら……。 色鮮やかな宝石が埋め込まれた杖の先端を、刀の柄頭に押さえこむようにして当てる。 「なっ……!?」 反撃をもらうとは思いもしなかったのだろう、鳩が豆鉄砲を喰らったような驚愕した様子で使者は私を見つめる。それから刀を振り下ろそうと必死に力を込めているようだが、こちらが始点を潰している以上、振れるわけもなく膠着している。 その間に使者がどんな格好をしているか確認しておく。綺麗に切り揃えられた銀髪に黒いリボン、瞳は緑色で、白いシャツの上に深緑色のベストとスカート。腰に一振り、背に一振り、それぞれ長さの違う鞘を帯刀している。 ……なんだか私のイメージしてたのと全然違うな。もっとこう、美しい羽が生えてて、衣服は布一枚だけであんな所やこんな所を隠しているような、俗世に塗れていないのを想像していたんだが。 「くっ!」 懲りもせずに使者は力を入れ続けている。一途というか単細胞というか……。仕方ない、退けてやるか。 「うわっ!!」 急に杖が離れたせいか、勢い余って前のめりになりながらも使者は刀を振り下ろす。もちろんそのままでいたら両断されてしまうので体をずらして回避する。
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