眼を覚ましたら、知らない場所だったってのはよくあることだ

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とさっ、と刀が土にめり込んだ。再び斬りかかられたくないので、動かせぬよう思いっきり刀を踏んづけておく。 「あっ……」 さっきから“あっ”だの“くっ”だの……もっとましな言葉を喋ってほしいものだ。 「わ……」 だからもっと普通の言葉をだな……と思っていると、さっきまでの殺伐とした空気が一変していることに気付いた。悲愴感漂うこの雰囲気に、よく見ると使者の体が小刻みに震えている。まさか……。 「わ、私の楼観剣が踏まれたぁ!! うわああぁぁん!!」 ……唖然呆然とはこのことか。顔を勢いよく上げたかと思えば、いきなり目から涙をぽろぽろと流しながら泣き始めたではないか。私は何か悪いことをしただろうか……。 「お、おい。何も泣くことはないだろう」 「うわああああん!!」 どうして私が悪いことをしたみたいな空気になっているんだ? どう考えても悪いのは斬りつけてきた使者の方だろうに。 オーイオイオイと響き渡る泣き声。いい加減にこれを聞き続けるのも嫌気が差してきたので、非常に不本意ではあるが謝ることにする。全く、何で私が……。 「……私が悪かったから、いい加減泣き止んだらどうなんだ?」 「ぐすっ……うぅ、本当にそう思ってます?」 「あぁ思ってるよ。だから泣き止め。いい格好してみっともない……」 屈んで泣きじゃくっていた使者はこちらを見上げながら私の返答を聞いた。 するとどうだろう。涙がピタッと止まり、楼観剣と言うらしい大刀を器用に背中の鞘に納刀した後に、キリッとした表情でこう口にした。 「先程の無礼、どうかお許しください。庭内にて不審な影を見つけてしまい、居ても立ってもいられなかったのでつい刀を向けてしまいました」 ……この変わり身の早さ、恐らくはさっきやらかした失態の穴埋めのつもりなんだろうが、呆れて物が言えん。 というか一応悪気は有ったんだな。もしも聞こえた言葉が謝罪ではなく憤怒だったなら私はこいつを多分殴り飛ばしてただろう、いや、殴り飛ばすな、きっと。
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