眼を覚ましたら、知らない場所だったってのはよくあることだ

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「まぁそれについては、今は置いといて……」 置いといていいのだろうか。 「あなたは今後どうするつもりなのかしら?」 どうするつもりか……下界に降りるか、ここに残るか、はたまた元の世界に戻る方法を探すか。……選択肢など、あってないようなものだろうに。 「失礼を承知で頼む。しばらくここに住まわせてはもらえないだろうか?」 幻想郷が元の世界から隔離されているのなら、行くことはもちろんのこと、戻ることも容易いことではないはず。方法があるとしても、そこに辿り着くまでにどれほどの年月をかけなければならないのか……恐らくは気が遠くなるほどの時間が掛かると見て間違いないだろう。 ならば下界に降りるか? 降りられるものか。死者が容易に生者の暮らす場に行けるはずがない。障壁か結界か、どちらかが必ずあるはずだ。仮に降りられたとしても、先が見えぬ以上得策ではない。 結果、消去法で『ここに残る』という選択になる。 「えぇ。いいわよ」 即答。最初から白玉楼に置いておく気だったのかと思ってしまうほどの、素早い快諾。 「というか、永住しても構わないわよ」 「いいのか?」 「ここを出ても行く先はないはずだし、そもそも結界が張ってあるから出れるわけもないし、どの道あなたはここに残るしかないのよ」 それにここはあなたのような幽霊が住まうにはピッタリの場所だしね、と付け加えて幽々子殿は微笑む。 「ならば、その言葉に甘えさせてもらうとしよう」 「うんうん、どんどん甘えなさいな。甘えて子供は育つのよ」 「……一応年は三百を超えているんだがな」 「あら、随分長生きな子供だったのね」 意外そうに口を開いたままにする幽々子殿。飽くまで子供扱いか。 「さぁさ、テルミンの今後も決まったことだし、今日は歓迎会でも開きましょうか」 「幽々子殿、その楽器みたいなあだ名はやめてもらえないか」 「その呼び方を止めたら考えてあげてもいいわ。ほら妖夢、いつまでもしょぼくれてないで、準備するわよ」 「……ゆゆこさま~」 「はいはい、泣かないの。準備が出来たら呼びに来るから、テルミンはそれまで待っててね~」 手伝いを買って出ようとする間もなく、幽々子殿と妖夢は部屋から出て行ってしまった。テルミン……早急に幽々子殿に代わる呼称を考えなくては……。
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