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「それは、みなさんがスペルカードを持ってないからです」
「スペルカード……弾幕ごっことやらで使うというアレか?」
ソレです、と言いつつ頷く妖夢。弾幕ごっこについては幽々子殿から既に聞いているし、スペルカードというのもその時に知ったので詳しい説明は割愛する。
「冥界という場所は現世にある様々なしがらみがない世界なんです。それで現世にいた人間が死に、冥界にやってくると現世との違和感に遭遇してしまう。今まで感じていた物が感じられないんですから、当たり前ですよね」
「うむ……」
「そうすると人は次にどんな行動を取るか、それは適応です。違和感に適応しようとします。体が軽いなら浮いていればいい、食欲が起きないなら食べなければいい、人型になるのが面倒ならならなければいい……。けっこう大袈裟に例えましたけど、要するに郷に入っては郷に従えみたいな感じです」
「……よく分かったが、それとスペルカードとどう関係があるんだ?」
今までの話だとスペルカードは全く無縁みたいだが。
「スペルカードは弾幕ごっこに必要不可欠で、同時に自分の強さの証明でもあるんです。力の強さ、頭脳の強さ、能力の強さ……とまぁ強さの種類は色々ですが」
「ふむ……それで?」
「たまに冥界に来られる方の中に、稀にですがテルミさんのように人型を保っていられる方がいるんです。そういう方は決まって我(が)を、自分を保てるほどの強い信念を持っています。それこそスペルカードを持つに足る強さの信念を」
「つまりだ。ここにいる連中はスペルカードを持てるほどの強さを持っていなかったから、人型を保てずに人魂になっているというわけか?」
そうです! と自分の考えが伝わって満足したのか緩かった表情をさらに綻ばせる妖夢。
成る程な。確かに、見た限りではこの場にいる者が束になっても、恐らく妖夢に勝つことはないだろう。幽々子殿の場合は語るまでもない。
この場で人型を保っているのは幽々子殿と妖夢と私の三人だけだ。無意識のうちに人型を保っていられるなら心配は無用だろうが、出来ることなら早めにスペルカードとやらを手に入れておきたいものだ。気付いた時にはすでに人魂だった、なんて情けないオチは御免だしな。
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