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「ほら!若いんだから頑張れ!!」
ねーちゃんは中身ごとに段ボールまとめながら、俺に言ってきた。
「・・・・・・、うるさいなぁ」
俺は段ボールを運びながら言った。
ふらふらと安定しない足取りで、ねーちゃんのところまで行くと、段ボールをおろした。
「お疲れ!」
ねーちゃんは笑いながら言った。
その笑顔にある意味殺意さえ芽生えた。
なぜなら、いまこんな目に遭っているのはねーちゃんのせいだからだ。
つい数分前、俺が海を眺めてるとねーちゃんはこう言った。
『海斗、私たちの荷物なんだから手伝わなきゃ!』
まあ確かに。
そう思った俺は、業者の人にそう伝えた。
もちろん大丈夫だと言ったが、俺も男だから手伝うと言った。
『なるほど。男ならエレベーターなしでも行けるよな?』
『は?』
てな感じで無茶ぶりをされ、断ろうにも断れなかった。
しかもそれに便乗して、ねーちゃんは俺をこき使った。
「・・・・・・ほんと疲れた」
俺はそのまま段ボールと同じように、床に座った。
汗でベタベタになったシャツがくっついて気持ち悪い。
だが、パンパンになって、自分の腕ではないような感覚の方が嫌だった。
「弟さん、大丈夫ですか?こういう力仕事は自分たちがやりますよ」
そう2人がかりでタンスを運んできた配達の人は言ってきた。
そんな彼の笑顔をみて思った。
もちろん俺と同じように汗をかいているが、あまり辛そうじゃない彼らが素直に凄いと。
「大丈夫・・・だよな?男はやらなきゃならないときがある」
そう、それは今だ。
と。
俺は浅く笑った。
震える手足に鞭を打ちながら、彼らと同じ目線になった。
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