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そのかわいさから、頭が真っ白になりかかった。
「あの、迷惑ですか?」
悲しそうな目でそう尋ねてきた。
・・・・・・そっか。
伊東さんがわざわざ親切心から提案してくれたのに、返事もせずに俺は自分の世界に浸っていたんだ。
そりゃ不安にもなる。
俺は罪悪感から、苦虫を潰したような顔をした。
それが余計に伊東さんを不安にさせるとも気づかず。
それに気づく頃には伊東さんは泣きそうになっていた。
「───ッ!」
情けない男だ、俺は。
深くそう思いながら、俺は頭を掻いた。
「・・・・・・すみません、お願いしてもいいですか?」
極力優しく言った。不安を取り除くように。
だが、伊東さんは相変わらずだった。
そして沈んだ表情で口を開いた。
「・・・・・・別に無理しなくていいんですよ」
伊東さんは俯きながらもぶつぶつ何か言っている。
俺の責任もあるが、彼女はそういう性格なんだろうか。
大人っぽさがあるけど、凄くデリケート。
簡単に落ち込んでしまうくらい繊細な。
───それがどこか“彼女”にも似ていた
さすがにこのままだとらちがあかない。
多少無理やりだが、これしか思い付かない。
俺は段ボール持って歩き出した。
「マジ感謝してますから、ささっと行きましょう!」
優しい伊東さんならついてきてくれる。
そう思って俺は歩き出した。
伊東さんはその光景を見て、おろおろとしている。
優しさを利用した最悪な手段だが、どうやら効果覿面だったらしい。
「───仲村さん!」
ほら、必死に声を張り上げちゃってさ。
これから走って追いかけてくるだろう。
俺は罪悪感を感じながらも、クスリと笑った。
「その、ゴミ捨て場は逆ですよ」
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