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☆
辺りは黒一色だった。
雨の中のお通夜。
まだ若すぎる香織の死に誰もが涙した。
式場の中はあまりにも静かで
自然と3人の声も小声になる。
「いまだに信じられない。香織が自殺したなんて」
弥生はハンカチで口元を覆いながら呟いた。
「私だって信じられないわよ」
京子が目を赤く腫らしながら笑顔の遺影を見つめた。
「でもみんな3日以内に香織に会ってるじゃない。何も気づかなかったの?」
七海はしゃくり上げながら二人を責めるような口調になる。
「七海が最後に会ったんじゃない」
京子は強い口調で言ったあと
小さな声でごめんと呟いた。
この3日間の間に3人と会っている。
それは香織の両親からも事情を聞かれたことだ。
状況は3人とも一緒。
香織が突然会いたいと言い他愛もない世間話と昔話。
香織からは死の匂いは感じとれなかったと答えた。
これが数日経った後や数年経った後なら
あのとき…と心に浮かぶこともあるのかもしれないけれど
昨日の今日ではただ驚くばかりで少しも心当たりがない。
一番最初に弥生。二番目に京子。三番目が七海。
最後に会ったばかりの七海が一番ショックが大きいように見えた。
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