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「なに?もう来たの?今、買い物したばっかなんだけど」
男の人の目は私に向けられていた。
…え?
戸惑っていると私の手を掴んでいる男は「誰?」と私に聞いてきた。
「ちょっと、俺の女になにしてんの。手離してくれる?これから一緒に鍋すんの。」
そう言うと男の人は私の手を取って歩き出した。
「彼氏のとこ行くなら言えよ。」
後ろで聞こえた声に
知らない人です、とも言えず私は黙っていた。
しばらく歩いていると、
「危ないよ。」
男の人は前を見ながら言った。
「…え?」
いきなり声をかけられた私は男の人の横顔を見上げた。
「ここね、あーゆう奴多いの。だから夜に一人で出歩くと危ないよ。」
あ、私、助けてもらったんだ。
「…あ、はい。助けてくれてありがとうございます。」
「どういたしまして。じゃ、気をつけて。」
「…あ、はい…」
男の人は手を離して、歩いてきた方向へと戻っていった。
私は男の人の背中を見つめたまま軽くお辞儀をして
奈々の家へと足を速めた。
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