━第1話━

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「なに?もう来たの?今、買い物したばっかなんだけど」 男の人の目は私に向けられていた。 …え? 戸惑っていると私の手を掴んでいる男は「誰?」と私に聞いてきた。 「ちょっと、俺の女になにしてんの。手離してくれる?これから一緒に鍋すんの。」 そう言うと男の人は私の手を取って歩き出した。 「彼氏のとこ行くなら言えよ。」 後ろで聞こえた声に 知らない人です、とも言えず私は黙っていた。 しばらく歩いていると、 「危ないよ。」 男の人は前を見ながら言った。 「…え?」 いきなり声をかけられた私は男の人の横顔を見上げた。 「ここね、あーゆう奴多いの。だから夜に一人で出歩くと危ないよ。」 あ、私、助けてもらったんだ。 「…あ、はい。助けてくれてありがとうございます。」 「どういたしまして。じゃ、気をつけて。」 「…あ、はい…」 男の人は手を離して、歩いてきた方向へと戻っていった。 私は男の人の背中を見つめたまま軽くお辞儀をして 奈々の家へと足を速めた。
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