152人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
一番大切な言葉を言って、拒否されるのが怖い。
大切だから、いらないと言われたらどうすればいいのかと恐怖で喉が引きつる。
(早く、言わないと)
気ばかりが急いて、それがまた言葉を紡ぐのを邪魔する。
早く早くと思うけれど、大切な言葉だからこそ簡単には言えない。
「春花……?」
待ってくれている里桜が促すように名前を呼んでくれる。
おそらく、これが最後のチャンス。
「あ……」
それでも出てこない言葉に春花は泣きたくなってきた。
その時、風が吹き葉桜がさわさわと囁くように揺れる。
その囁きに数週間前のこの場所を思い起こした。
(相良くんもこうだったのかな?)
自分に告白してくれたとき、こんな風に怖かったんだろうか。
そこに思い当たった。
里桜は告白を断られても宣戦布告だと言って諦めなかった。
そうだ、諦めなかったのだ。
(そっか……断られたからって、絶対に諦めなきゃいけないわけじゃないんだ)
数週間前の里桜に背中を押してもらえたような気分になる。
葉桜の囁きが、勇気をくれた。
「相良くん、あたしね」
ドキドキと、鼓動が早い。
葉桜に勇気をもらってもまだ少し怖くて、涙目になってしまう。
それでも、伝えた。
「あたし、相良くんが大好きです」
最初のコメントを投稿しよう!