5.どんなあなたでも

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 自分の言葉が彼を傷つけた。  それは確実なのだから謝らないと。  でも何と言って謝ればいいのかが分からない。  そうして言葉を出せずにいると、里桜が口を開く。 「話がないなら行くよ。制服離してくれない?」  淡々と、冷たい声音。  突き放すような言葉に泣きたくなる。  だが、離すわけにはいかない。  きっと、このチャンスを逃したらもう本当に彼とのつながりは切れてしまう。  直感的にそう思った。  離すどころかギュッと裾を掴む手に力を入れた春花に、里桜はため息をつく。 「はぁ……俺のこと、大嫌いなんだろ? だったら俺のことなんてさっさと忘れろよ」 「嫌!」  里桜の言葉に、春花は色々と考えていたことも忘れ反射的に顔を上げた。 (嫌。そうだ、嫌なんだ)  里桜のことばかり考えてしまうから言葉が出せないのだ。  分からないなら、まずは自分の気持ちをちゃんと伝えなきゃならないのかもしれない。  それに気付いた春花は睨み上げるように里桜を見た。 「相良くんを忘れるなんて、絶対に嫌!」 (ちゃんと、伝えなきゃ。……あたしは相良くんが好きだってことも言えてない!)
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