5.どんなあなたでも

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「? 相良くん?」 「……理由、言わねぇとダメ?」  視線だけを逸らして呟く里桜に、春花は数度(まばた)きを繰り返す。  そしてふと、彼がこの間自分を泣かせたときのことを言っているのだと分かった。 「えっと、出来れば教えて欲しい……かな?」  なぜあんなことをしたのか。  どうして怒り出してしまったのか。  理由が分かればその地雷を踏まずに済むかもしれない。  里桜は不服そうにだが視線を戻し、ぼそりと呟いた。 「……名前、呼ばねぇから」 「え?」 「あの元カレのことは名前で呼んでたのに、お前はいつまでたっても俺のこと名前で呼ばねぇから腹が立ったんだよ」 「……え?」 (それはつまり……)  嫉妬。  あの強引なキスが嫉妬から来たものだと知ると、春花は自分の中でふつふつと喜びが湧いてきたのを感じた。  もっと早く知っていれば、嫌いなどと言わなくても済んだかもしれない。  そう思うと同時に、知ろうとする前に自分が突き放したんだと気付く。  後悔が押し寄せてくるが、今はこれからのことを考えるべきだと思った。  きっと、自分達には言葉が足りなかったのだから、と。
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