5.どんなあなたでも

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***  生い茂る緑が深くなってきたしだれ柳。  それに隠れるようにある古ぼけたベンチで、無事に仲直り出来た春花と里桜は以前よりも近く寄り添って座っていた。 「里桜? その……この体勢恥ずかしいんだけど……」  また里桜と一緒に昼食を食べることになった春花は、食べ終えた後の体勢に不満を零した。 「ん? だってこの方がお前の顔良く見えるし」  少し意地悪く笑う里桜はその体勢を変える気は無いらしい。  前までは春花の膝枕という体勢でいた安らぎの時間。  今は、春花が里桜の膝の上に乗るという形となっていた。  横向きに座り、背中は里桜の腕が支えてくれている。  意外と安定はしているが、顔が近すぎて春花は恥ずかしかった。 「それに」  チュッとリップ音をつけて唇が軽く触れる。 「この方がキスしやすいしな?」  実戦で教えられ、春花は言葉もなく赤面した。  里桜は意地悪で俺様なところもあって、強引なところもある。  だが、誰よりも自分を好きでいてくれる人だ。 (そして、あたしの一番大好きな人)  だから、恥ずかしくてもこの体勢を許してしまう。  そのまま再び落とされるキスに瞼を閉じた。  ずっと、このときが続いてくれるように。  しだれ柳の枝の様に、長く長く続きますようにと。 END
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