不満なんてどこにでもある

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わりと良い所のお嬢さんだったわけだ。 上に七人も兄弟姉妹が居るせいか、父様は名前を付けるのが面倒だったとかで、男ならばギア、女だったらロゼとその当時、貴族の間で流行っていた名前を用意していたらしい。 だが、私が産まれた当日、領主に届け出る書類にロゼと記入しようとした父様は、やっぱり少しは他と違う名前にしたいと、あろうことか男名と女名をそのままくっつけて提出しやがったのだ。 それを聞いた幼い頃の私は思わず口走ってしまったものだ。 「馬鹿だろ。」 若干(じゃっかん)、口が悪くなっていたのは、別に反抗期ってわけじゃない。ただ虫の居所が悪かっただけだ。 貴族ってのは子供ですら外面の良さを要求される。 子供ながらにストレスは溜まり放題。 そこに付け込み所を携えた鴨を見つけたら、待っているのは陰湿ないじめだ。 私の名前もその標的にされたのだが、性格的に黙ってやられる質では無かった。 「お前、男なわけ? 女なわけ? あ、もしかしてどちらでも無……ごふっ!」 片っ端から拳で沈めていったのだ。 それを知った父様は激怒。 ……なんてしなかった。
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