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末娘ということもあり溺愛されていた私は、間違えた方向に自由だった。
「素晴らしい! この子には武術の才能があるに違いない!!」
父様は張り切ってその筋の先生を呼びまくったそうな。
かくして、私には本当に武術の才能が眠っており、めきめきと腕を上げた。
腕を上げたのは良いが、上げすぎた。
私の父様は領主の軍に所属しているのだが、今のところ、私に敵う奴などいない。
まあ、平和ぼけした領地だ。仕方ないのかもしれないが……。
軟弱な。
物思いに耽り、カウンターに肘をついて、行儀悪く舌打ちをした私に、看板娘は渋面を作る。
「ちょっとー、うちの料理がまずいと思われたらどうすんのよ。」
いや、まだ果実水しか頼んでないんだけど……。
甘く爽やかな半透明の果実水をちびりと飲んで、美味しいですと言っておいた。
彼女の機嫌は損ねたくない。
ナーヤは愛想笑いの私を軽く睨んで、注文に呼んだ客の所まで行ってしまう。
茶色のワンピースの裾に着いたレースが軽やかに揺れる。
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