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「こらこら、そこでホッとした顔してるんじゃないの。」
ナーヤが呆れ顔で、私の額をペしりと叩いた。
それほど痛くはなかったが、なんとなく額を押さえる。
「あんた、ゲンが他の女触っても平気なの?」
あ、そういえばそれ、嫌だ。
何でだろう?
黒い蟠(わだかま)りのような感情が込み上げる。
昨日もそれを考えると嫌で嫌で、目眩がした。
「それ、嫌だ。」
「でしょ?」
嫌。
でも、ゲンはここが好きなわけで。
だから、
「これって我が儘だよな?」
ナーヤの眉間にものすごく深い皺(しわ)が刻まれる。
「なに言ってるの。」
大袈裟な溜め息が一つ溢れる。
「あんた、ゲンの妻なんだから、はっきり嫌って言っても良いに決まってるでしょ。ぶん殴ったって、男の象徴ぶった切ったって、文句は出ないわよ。」
男の象徴って何?
いや、それよりも殴ったら普通に文句は出るだろう。
「んー。言えないって言うなら、ここにゲンが来なくても良いようにすれば良いのよ。」
「でも、ゲンはここが好きなんだろう?」
あ。
自分で言っててもやもやする。
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