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〈1〉
「……なにむくれてんの?」
待ち合わせは、いつもと同じマックの禁煙カウンター席。
ここに来る前に、どっかで一服してきたみたいで、彼から微かにいつもの煙草の香り。
困ったような顔で覗き込んでくるけど、別に私はむくれてない。
ガラスの向こうが眩しくて、目を伏せていただけなんだ。
なんともないよ、と言いかけて、ふいに彼の片眉を寄せた表情が可愛いな、なんてぼんやり思ってたら
「もしかしてだいぶ待った?」
と携帯を取り出す彼。
しまったタイミング逃しちゃった。
待ち合わせメールを見るために、小さな携帯をいじる彼の手は、ちょっと骨ばってて、でも指が長くて、カッコイいい手だな、と見つめてしまう。
ふっと視線をこちらに向けて、不安げに
「今日は時間、間違ってないよな?」
と私の表情を伺う彼に、キョトンとしてから、思わず吹き出す。
困らせたいわけじゃないけれど、黙ってると強面に見える彼の、優し気に下がる眉毛や目尻を見るのが好きだ。
知り合って1年、付き合って3ヶ月。
『最初っから気になってしょうがなかった、好きでしょうがないから、俺のこと男として意識してほしいんだけど。』
ちょっと唇を尖らせながら、そう言った彼に
『善処します。』
と我ながら色気のない答え。
『付き合ってくれんの?』
と問われ
『付き合いましょうか』
と答えたら、見たこと無いくらいびっくりした顔をして、嬉しそうにくしゃくしゃな笑顔になって、つられて笑顔になった私。
基本的にテンション低めの私だけどね、なかなかどうして、君に夢中みたいですよ。
だって君の一つ一つのことから、目が離せなくて、愛おしくてしょうがないんだから。
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