恋の話~甘口~

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〈2〉 時計の針は3時からさらに10分進んでいて、どうやら待ち合わせの相手は、すっぽかしたらしい。 短く息をつき、一応携帯を開いてみるけど、着信も着メールも特になし。 (いいけどね、出会い系だし) ふっと横をみると、スラッと背の高い小綺麗な男子。 25の私よりは多分確実に年下。 時々携帯を開く素振りが視界に入ってたから、多分待ち合わせ。 私よりも前にいた、けど私の待ち合わせ相手じゃない。 (そちらも待ちぼうけ?) なんて思ってたら彼の視線が降りてきて、 「あの、ナンパしてもいいですか?」 と聞いてきたから、 「え?」 と聞き返すのは、ふつうの反応じゃないかと思う。 我ながら間の抜けた顔してたと思うけど、彼は耳たぶを赤くしながら続けて 「友達の紹介で待ち合わせしてたんだけど、ここで待ってたら、その、どストライクの人がきて、待ち合わせしてるみたいだったし、俺も待ち合わせ中なわけで、だからどうしようかと思ってたら、運良くっていうか、そのお互い相手こないみたいだし、あ、スイマセン、運がいいのは俺だけかもだけど、だからその…」 薄い唇から発するそれは、ナンパというより決死の告白みたいに聞こえて、 「じゃあ、お茶でもしてみる?」 と言った途端に、思わずこぼれた笑顔と、小さなガッツポーズ。 そういう反応は、どストライクなんです。
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