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〈4〉
「なにその格好」
待ち合わせは、いつもの駅前街頭テレビ脇。
うつむいて携帯をいじっていたとこに影が差したので、顔を上げたら珍しく眉を寄せた不機嫌な顔。
いつもだと、何はなくとも、へらりとした笑顔でやってくるのに……と思ったところで言われた冒頭の台詞。
「かっこ?」
言われた意味が、すぐには理解できなくて、短く聞き返してから、自分の服に視線を落とす。
全体的に茶系で無難な、いつも通りの服装。
「なんか変?」
と、聞き返せば、
「スカート」
との一言。
膝上のスカートは特に特徴もない、シンプルなセール品。
「え?ほつれてる?」
少しかがんで裾を軽くさわったところで、
「違うっ。可愛い格好してっから、なんなのってことだよっ。」
怒ったような口調でそういう彼を、もう一度よく見てみれば、不機嫌というよりは、にやけ顔をこらえるような複雑な表情で、見たこともないくらいに耳が赤い。
「いつもと違わないよ?」
「スカート履いてんの、初めて見た。嫌いなのかと思った。」
「初めてだっけ?」
「初めてだよ。」
「スカート好きなの?」
「お前が好きなの。好きだから、俺と会うとき、可愛いのは嬉しいの。」
相変わらず怒っているような口調だけど、愛想の良い彼の、ほかの人には見せない珍しい表情が可愛いくて、自分がそんな顔させてることが嬉しくて、思わずにやけてしまいそう。
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