有色透明

恋の話～甘口～

〈５〉

「なんか、ここんとこ週末のたんびに雨だな。」

目的の映画館のある駅から出る時に、傘を開きながら、一人言みたいにこぼす彼。
私も自分の傘を開こうとしたとこで、

「ひとつでいいだろ。」

と軽く腰を抱き寄せられる。
加えて、ちょっと早口で、まるで言い訳でもするみたいに、

「人、意外と多いから傘邪魔だし、この方がかえって濡れないだろ、お前傘さすの下手だし。」

普段は滅多に手も繋がない彼が、そんなことを言うもんだから、横顔を見上げてみたら、いつも通りの澄まし顔だけど、耳たぶがほんのりピンク。
思わずからかいたくなってしまって、口元がムズムズするけど、余計な一言で気が変わっちゃったら、もったいないから、抱き寄せられた位置よりも、もうちょっとくっついてみる。