~ 進入 ~

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    「……? みんな、ちょっと来てくれないかしら」     先をズンズンと進んでいったアサミさんが言った。コチラからでは机の影となって見えないのだけど、アサミさんは何かを見つけたのだろう。その視線は1点に集中している。いったい何を見つけたと言うのだろうか。     首を傾げてしまったウチは、不気味なアサミさんの笑顔を見ながらその何かへと近付く。ようやく見えるか見えないかの所で「見てなさいよ」と、アサミさんは警棒を高く振りかざした。     「――ッ!? 待ってくださいっ!!」     慌てて駆けつけ2人の間へと入る。アサミさんの次の行動が読めてしまったのだ。振り上げた警棒が狙っていたのは、蹲り震えている男性だったのだろう。でもそれはいけない事である。何故なら――     「ちょっと、危ないじゃない」     「アサミさん落ち着いてくださいよっ! この人、アブスケさんだよ」     蹲っていた男性の髪型には見覚えがある。服装にも。リーゼントに学ランなんてそうそういやしないだろう。これは間違いなくアブスケさんだ。しかしどうした事だろうか、何かに怯えて震えている。こんなにも近づいたのに、蹲ったままでウチ達に気付こうともしなかった。     「……アブスケさん?」        
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