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生命に別状はないだろう。ブツブツと何かを呟いているようだけど聞き取ることはできない。だから仕方ないので、ウチはアブスケさんの肩を揺すってみた。
「ジジィ……死んでもうたわ。なんやねんて、ここ……。1人で大丈夫言うたやん? だから俺は……」
「アブスケさんっ!」
ようやくだけど、アブスケさんの定まっていない視点がウチへと向いた。だけど、直ぐにその視線は別の所に向けられる。視線の先にあるのは『生活安全課』の取調室。あの部屋で何かが起きた?
「落ち着け、見苦しいぞ。いったい何が起きたのかくらいは説明しろ」
「アホぬかせ、落ち着いとるわ。落ち着いとるから、わからんのやって。……ジジィ、逝ってもうてんぞっ! こんなんっ、こんなんっあってたまるかっ!」
アブスケさんは震える声で言う。ウチらと別れて警察署へ向かったアブスケさん達は、説明しようのない状況を説明され、そのままあの部屋へと通された、と。そこに通されてようやく説明にならない説明に合点がいったと言う。
PCの置いてある机の前に縛られた警官。狂ったように歯を剥き出し呻る警官は、俺を解放しろ、と暴れ狂っていた。その尋常ではない狂いようは、普通ではない何かに取り憑かれた狂気そのもの。
「よう分からんけど、机にな、ほら……ちっちゃいパソコンあるやん? それあってん。何か動いて……なんやあれ? DVDってんか? あれやねんて……」
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