~ 進入 ~

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    始めにアブスケさんと出会った印象の欠片もなく、見る影もなく弱々しく話している。頭の中で整理されていないのかアヤフヤな説明だった。だったけど、ウチ達には理解できてしまうのだ。     「あの映像かっ? あの映像観ちまったのか!?」     コウが言うと、アブスケさんは怯え手引き攣ってしまった表情で何度も、何度も頷いた。     「そんでな、縛られとった奴おるやん? ものっそ暴れだして、正直笑ろうてもうたし。アホな面して、鼻水バーバーやし、もうグッチャグッチャやねんよ」     しかし、その説明では断片的すぎで状況がみえない。フィルさんもそう思ったのだろうか、立ち上がり前の部屋の様子を窺う。やはり説明を聞くより、見た方が早いと判断したのだろう。     部屋の様子は、真ん中に机が置いてあり、手前右隅にも小さな机が置いてある。どう言う成り行きでこの状態になったか理解は出来ないけど、真ん中の椅子に座らされている男性を、アブスケさんのお父さんが数珠で首を絞め、己の首も同時に絞めて死んでいた。その周りに、突入した鎮圧部隊が6人、円を描くように死んでいる。     「なんだ? どうなってるんだ?」     「分からへんやろ? パソコンの音量大きなって、外が騒がしいなぁ思たら、バンバン自殺してくやん? 鉄砲はヤバイやろってジジィ言うから、1階行って事情話してな、アナウンスしてもろたんよ。鉄砲没収しぃって。んで、帰ってきたら……」     そこでアブスケさんは口を閉ざした。説明されずとも、状況を見たら把握できる現状。ああ、ここは3階だ。だからニオイが余り篭ってはおらず風通りがよかったのだろう。        
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