~ 進入 ~

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    「ねぇ、コウ? ウチからもお願いする。だってそうだよね、多分だけどさ、この道はウチ達が避けて通れないと思うんだ」     「……なんでお前らはそう物分りがいいんだよっ! いいよ、勝手にしろよ。どうせ俺も逃げる気なんてねぇし」     外方を向いたコウは、やはり不機嫌に鼻を鳴らすのだったけど、きっとコウも悔しかったのだろう。何も出来ず、何も止められなかった自分を。勿論、それはウチの勝手なイメージだけどね。     「話は決まったな。貴様ら、覚悟を決めろ」     片手で器用にノートPCを操作するフィルさん。目的の画像は直ぐに見付かったのだけど、そこに映し出された映像は、どうにも理解しがたいものだった。     ――真っ暗な映像から始まり、ゴボゴボと水に潜る様なる様な音が聴こえてくる。これは水の中? 砂嵐にも似た雑音は不思議と安堵を与えてくれた。そんなよく分からない感覚に陥っていた時、画面の真ん中から割れる様に光が見えてきた。     『オアァァアッ! オアァァアッ! オアァァアッ!』     鳴り止まぬ鳴き声の様なもの。これは猫の鳴き声なんかじゃない。これは……。その考えが過ぎった時――ゴトッ、という音と共に映像が揺れた。映し出されているのはオレンジ色の光のみ。閉じられたマブタ。あの光は何?     そしてウチ達が最後に耳にしたのは――子守唄だった……。        
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