~ ここはどこ? ~

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    そこでアナウンスが流れる。やはりここはクルスの知っている場所だ。駅の名前には聞き覚えがあった。確認を取る為にクルスが視線を振ると、手の平を乗客の顔に向かってヒラヒラと振るフィルの姿が目に止まった。だがしかし、乗客はフィルの存在を認識してない様に無視し続けている。     知らない人にあそこまでされているのだ、携帯電話をいじっている目の前で手を振っても気付いてはくれないどころか、不快な表情1つ浮かべてはいなかった。     「ちょっとアナタね、常識ってものを知らないの? コッチにきなさいよ」     言ったアサミがフィルの腕を引いて戻ってくる。それでもフィルの態度は皆無に等しかった。何かを考えているのか、出入り口付近で たむろしていたクルス達の前に来ても口は開かれる事はなかった。     「お前ら緊張感なさすぎちゃうか? ここは普通やあらへん。見てみい、あの広告なんか3年前のもんやで」     「言われてみればそうね。服装もなんだか夏にしては厚着だし」     言われて、クルスも辺りを見てみたが、言われた通り夏にも拘らずに袖の長い服装が目立つ。流行先取りにしても、秋服には少し早すぎる時期だったはずだ。こうして見ると、半袖を着ているクルスやコウの方が馬鹿の子である。     「見せられているのだろう。ここはまだあの空間の中だ」     「見せられているですって? それってあの映像が関係しているのかしら?」        
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