~ ここはどこ? ~

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    アサミの一言で皆の表情に緊張が戻るのを感じた。記憶を遡り映像を観ていた時を思い出してみると、その経緯が少しだけ見えてきたような気がしたはずだ。空間を包み込むように広がる耳鳴りは、波紋を描きながら(目視できた訳ではなく、感覚)フロアを取り込んでいった。     激しい頭痛に似た耳鳴りは、その場にいた5人の意識をほんの一瞬だったが意識を遠のかせていたのだ。目を開いた時にはもう、この電車の中に居たとなると、原因はやはり人形なのだろうか。     「なぁ、駅って言えば……」     コウが何かを言い掛けた時、ちょうど電車が駅に到達する事となった。しかし、その瞬間の出来事――ゴスンッ、と小さな衝撃と物音が微かに響いた。例えるならば、小石を轢いたような、それとも小動物でも轢いたような衝撃だろうか。     何事かとクルスはキョロキョロ。しかしコウには、その何かが見えていたのだろう、蒼褪めた表情で出入り口の窓に張り付いていた。     「えっ……何?」     クルスもまた、コウの見ている物を目で追った。そこに転がるのは、仰向けで横たわる1人の女性。電車に轢かれた? だがそんな風には到底クルスには思えなかっただろう。     綺麗なのだ。まるで眠っている様に横たわる女性を、クルスはただただ見ている事しかできなかった。     「今の見てなかったのかよ? アイツが――」         
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