~ ここはどこ? ~

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    「誘い込まれ取るみたいやな。まあええわ、さっさと成仏したい言うとるんやろ」     言って2番手で降りたアブスケは、徐に懐へと手を入れて、琥珀に火山灰が混ざり込んで虎模様が浮かび上がった数珠を取り出した。しかし、アブスケの足は直ぐに止まり、後ろで残された3人が痞える事になってしまった。     今更臆したとも到底思えない。首を傾げてしまったクルスは、ドアを覗き込む様に様子を見た。そんなクルスも固まるのだが、彼女らはいったい何を見たと言うのだろうか。     「ちょっと、何しているのよっ」     強引に2人を押したアサミは言う。踏ん張っていた訳でもない2人は、前のめりに前へと2~3歩。そこでようやく道が開けて、残されたアサミとコウにも状況が見える事となった。     仰向けに倒れている升富 桜。その死体の上には、愛くるしいとは到底言えないだろう気色が悪い人形が置かれていた。いや、置かれているより、立っていたと言うべきだ。     『キャッ、キャッ……』     「なんのジョーダンや、これ?」     人形の音声が流れたと同時に、升富の身体がビクンッと跳ね上がる。電車に轢かれたにしては綺麗な死体。もしかするとまだ息があったのか、そうとも思えるのだけど違うのだろう。   人形を掴んだ升富は、カクカクとした不自然な動きで立ち上がり、まるで操り人形を思わせる無機質で覚束ない足取りで歩き出した。        
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