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「だから心配する事ないって」
「でも......今日だって、授業中、すっごく眠そうな顔してたし......」
「あいつの事だからさ、バイト終わった後に、夜遅くまで勉強してるんだよ」
「うん......吉岡くんもそう言ってたけど......でも、授業に集中できない程疲れてる事なんて、今までなかったし......」
「てかさ、尚なんて、疲れてなくても集中してないじゃん。今日だって、広瀬っ、どこ見てんだ!って先生に注意されてたくせに。どうせ吉岡のことチラ見してたんでしょ?」
「......」
思わず黙った私に、
「大丈夫だって。いくら吉岡でも、自分の限界越えたらバイト休むとかするでしょ」
平然と言った梨花は、食べ終えた食器を前に「ごちそうさまっ」と両手を合わせた。
9月末の水曜日。
いつものように、うちに夕飯を食べに来てくれていた梨花に、私は、最近気になる彼の様子を相談していた。
2学期が始まって以来、ほぼ毎日のようにバイトに行っている吉岡くん。
朝の登校時間も遅くなり、ここ最近は、日中でも眠そうな顔をしている彼に、私の心配は募るばかりだった。
「尚、早く食べてよ。今日は私が洗ってあげるからさ」
「あ、うん......」
ソファーの上でゴロゴロしている梨花に急かされ、残りのご飯を口に入れる。
「私、お願いしに行こうかな......」
「お願い?」
「うん......吉岡くんのバイト先の店長さんに、もう少し彼にお休みください、って......」
モグモグしながら口を開いた私に、
「なっ......ダメだよっ!」
梨花は、寝そべっていたソファーから、ガバッと身を起こした。
「え......なんで?」
梨花のその慌てぶりに、目をパチクリする。
「な、なんでって......あっ!そういうのはさ、吉岡の問題であって、尚が口出しする事じゃないよっ。うんっ」
「そうだけど......でも、高校生の吉岡くんを毎日のように働かせるお店なんて、おかしいじゃない......」
「で、でもそれはさ......あっ、ほらっ、お店の事情というか、そういうのもあるじゃんっ?」
「でも......」
もし吉岡くんが、働き過ぎで倒れちゃったら大変だし......そんな事になったら、私だって悲しいし......
うん。やっぱりお願いしてみよう。
「私、今から行って来る」
決心し、カタリと箸を置いた私は、
「ダメだってばっ!!」
突然立ち上がった梨花に、ビクッと震えた。
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