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「......ちゃんと食べないとダメって言ったろ?」
取り残された屋上で、吉岡くんは、壁に背中をもたらせ、遠くを見ながら言った。
「......今から、食べるもん」
「......足りるの、それで」
「......うん」
吉岡くんと二人で並ぶ屋上は、クラスにいる時よりもその距離が近いせいか、妙にドキドキしてしまう。
「あの......戻らないの?」
なんだかクリームパンが喉を通らなかった私は、そろりと彼に尋ねた。
「......待ってる」
「......え?」
「......一緒に、戻ろ」
「......」
こちらを見ないまま、呟くような声で言った彼の横顔を、思わずジッと見つめる。
たったそれだけの事なのに......
私は、大好きなはずのクリームパンの味が、なぜだか今日は、よくわからなかった。
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