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「......ご、ごめっ......」
慌てて涙を拭い、辺りを見回す。
ここ、コンビニなのに......
「ごめん、私、行かなきゃっ」
「広瀬」
「ごめんなさいっ、こんな所で泣いてっ」
彼の言葉を遮るように、二つの袋を肘にかけ、立ち去ろうとした時。
「広瀬、お釣り」
「えっ?」
「......」
「......」
......あ。
私は、ますます顔を熱くしながら、財布を持っていない方の手を、ゆっくりと彼の前に広げた。
「.......ちゃんと考えなよ?」
「......え?」
「......その涙の意味」
不意に、ふっ、と目を細めた吉岡くんが、私の手の平に、そっと小銭を乗せる。
彼の、柔らかい笑顔......でも、どこか寂しそうな瞳を前に、
「うん......」
コクリと頷いた私の目から、再び一粒の涙が落ちた。
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